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京都地方裁判所 昭和44年(行ウ)28号 判決 1972年4月01日

原告

京都厚礼自動車

株式会社

代理人

前堀政幸

外一名

被告

京都上労働基準監督署長

黒川正則

代理人

上辻治

外六名

主文

原告の請求を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一、解雇予告除外認定拒否処分は、抗告訴訟の対象となる行政処分かどうかについて考えて見る。

被告は、解雇予告除外認定は即時解雇の効力要件ではないから、除外認定は使用者と労働者の雇傭関係上の権利義務に影響を与えず、従つて抗告訴訟の対象となる行政処分ではないと主張している。

被告の主張するとおり、除外認定は即時解雇の効力要件ではなく、即時解雇の意思表示の効力または解雇予告手当の支払義務の有無は、もつぱら解雇予告除外事由の客観的存否によつて決せられるのである。(この点についての原告の主張は採用できない)従つて右除外認定(またはその拒否)処分は、使用者と労働者との間の雇傭契約上の権利義務に何らの影響も及ぼすものではない。

しかしながら、右の事実から、直ちに除外認定(またはその拒否)処分が、これを受ける者(使用者)の権利義務に関し、全く法律上の影響を及ぼさないといえるのであろうか。

労基法第二〇条第一項但書によれば、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合には、使用者は、予告期間をおかず、かつ予告手当を支払うことなく労働者を解雇できるのであるが、同条第三項によつて使用者は右解雇予告除外事由について行政官庁の認定を受けなければならず、除外認定を受けずに即時解雇をすると、たとえ実質的に即時解雇の要件が具備していて、その解雇が有効である場合でも同法第一一九条第一号によつて、六ケ月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処せられることになつている。解雇予告除外事由について行政官庁の認定を受けるべきこととしたのは、使用者が自己の恣意的判断によつて予告手続を経ずに即時解雇をすることを抑制しようとする労務行政上の見地に基くものである。従つて、使用者と労働者間の私法上の雇傭契約の効力に影響を及ぼさないという事が直ちに除外認定(又はその拒否)処分が抗告訴訟の対象となる行政処分にならないとする結論に直結すると考えることは出来ない。即ち使用者としては、私法上即時解雇の要件が具備していても、除外認定を受けずに即時解雇をすれば、解雇そのものは有効であつても処罰の対象になることから免れることは出来ないし、又除外認定拒否処分があつた場合処罰の危険を冒さなければ即時解雇が出来ない法的拘束を受けることになるから、右処分は使用者の法律上の利益に直接影響を及ぼす行為というべきである。

よつて、除外認定拒否処分は抗告訴訟の対象となる行政処分というべきである。

二、訴の利益

被告が昭和四六年六月二五日本件解雇予告除外認定拒否処分をなしたところ、原告は同日訴外近藤真康ほか二名に対し解雇予告手当を提供した上、解雇する旨の意思表示をなしたことは当事者間に争いない。そうだとすると、本件除外認定拒否処分を取消しても原告が本件と同一の理由により、あらためて除外認定を受けて、訴外近藤真康らを即時解雇することはありえないのであるから、原告には本件拒否処分を取り消すだけの法律上の利益が既になくなつたものというべきである。

従つて本件解雇予告除外認定拒否処分は、抗告訴訟の対象となりうる行政庁の処分にあたるが、原告には右処分を取り消すについての訴の利益がないから、結局原告の本訴請求は不適法であり却下を免れない。

よつて原告の本訴請求は実体について審理するまでもなく訴訟要件を欠くものとして却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(山田常雄 伊藤博 房村精一)

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